分注装置とは
分注とは
分注とは、医療や理化学などライフサイエンス分野の研究や検査において、ピペットなどで検体や試料となる液体を一定容量吐出することです。分注装置とはその分注作業を自動で行う装置のことで、分注装置の他に分注機、ディスペンサー、ドロッパー、リキッドハンドラー、ピペッターマシンなど様々な呼び方があります。
分注方式
ライフサイエンス分野で使われる分注装置では、液体の吸引吐出に様々な方式が利用されています。シリンジ方式やプランジャーポンプ、ダイヤフラムポンプなどの往復ポンプ方式、シリコンなどの軟質チューブをしごいて送液するペリスタポンプ(チューブポンプやローターポンプとも呼ばれます)方式などです。
他にも液体の入った密閉空間を加圧し、バルブの開閉により液体を飛ばす加圧バルブ方式、超音波を液体に当て飛ばす方式、など様々な分注方式があります。
ピペットチップ
プランジャーポンプを利用したピペッタータイプの分注装置では、吸引吐出される液体に接触するのは、分注ノズルの先端に装着されたピペットチップのみとなります。
この仕組みにより、検体や試料などの液体が分注ノズルやシリンジなどの機構部へ接触しないため、装置が液体により汚染される危険性が低くなります。
また異なる種類の液体がピペットチップ内で混ざる(コンタミ)のを防ぐため、一度使われたチップは通常使い捨てにします。
そのためピペットチップはディスポーザブルチップ、またはディスポチップと呼ばれることもあります。
ピペットチップには、数μlの微量から数mlの大容量まで様々な容量のタイプがあります。
液体が装置を汚染する危険性を更に低くするために、チップ内にフィルターが入っているタイプ(フィルターチップ)もあります。
分注ヘッド
分注ノズルとシリンダーブロックから成る分注ヘッドは、分注精度(AC:絶対精度、CV:繰返精度)に大きな影響を与える分注装置の重要パーツです。分注ノズルの本数(チャンネル数)にも次のように様々なタイプがあります。
1ch、8ch、12ch、16ch、32ch、96ch、384ch、1536chなどマルチチャンネルタイプの分注ヘッドでは、並んだ分注ノズルの間隔を、一般的なANSI/SLAS規格のマイクロプレートのウェル間隔(96プレートでは9mm、384プレートでは4.5mm、1536プレートでは2.25mm)に合わせたものになっています。
マルチチャンネルタイプの分注ヘッドには、採血管や検体チューブ、バイアル瓶など様々な形状の容器へアクセスするために、分注ノズルの間隔を可変できるタイプもあります。
このタイプの分注ヘッドを持つ分注装置は可変ピッチタイプやバリスパンタイプと呼ばれています。
分注装置の用途
ライフサイエンス分野において分注装置は多岐に渡る様々な用途で使われています。
創薬
化合物のハイスループットスクリーニング(HTS)
薬物動態試験
安全性試験
遺伝子
核酸抽出/精製
PCR前処理
シーケンス前処理
NGS(次世代シーケンサー)前処理
細胞
細胞培養(細胞分注、培地分注、培地交換)
細胞洗浄
1細胞(シングルセル)分注
臨床
アレルギー検査
遺伝子検査
微生物検査
細菌検査
ウイルス検査
免疫検査
薬毒物検査
PCR検査
FLISA法検査
ELISPOT法検査
抗核抗体反応検査
QFT検査
分析
MALDI-TOFMS用前処理(サンプルの脱塩濃縮、マトリックス添加)
質量分析用デバイスへのサンプルスポット
LC-MS用前処理(サンプル調整)
分注装置とのインテグレード
研究や検査の無人高速処理を行うためには、分注装置の他に必要となる機器類をインテグレードしてフルオートシステムを構築します。
分注装置とインテグレードする機器例
インキュベーター
CO2インキュベーター
プレートシーラー
プレートシールピーラー
プレートホテル
チップラックホテル
遠心機
サーマルサイクラー
プレートウォッシャー
プレートリーダー(吸光測定、蛍光測定、化学発光測定)
マルチプレートリーダー
イメージャー
ハイコンテンツイメージングシステム
ロボットハンド
分注装置のインデグレード例
